理事長あいさつ 創立10周年を迎えて


「創立10周年を迎えて」

 NPO法人技術交流フォーラムが誕生して早やくも10年が経過し、10月1日に記念行事を無事挙行することが出来ました。これも一重に会員諸氏の所属する組織や関係諸団体の皆様のご理解とご支援の賜物であり、厚く感謝申し上げます。

 発足当時の日本は「失われた10年」と囁かれた頃ですが、公共工事投資額は高水準にあり、景気の回復が期待されていました。しかし、超低金利政策下でもデフレと円高基調は続き、「失われた20年」の言葉が浮上する中、東北大震災と原子炉メルトスルー事故が勃発し、日本は大混乱のるつぼに陥落しました。予知予測はことごとく外れ、システムの安全神話は瓦解したため、「想定外」言葉が乱発され、科学・技術者の判断力や倫理観までもが信頼性を大きく失いました。

 このような現世日本において、当フォーラムの会員諸氏が過去を振り返り、今後を見極めるには絶好の機会と考えました。「塞翁が馬」の譬(たとえ)通りに、この混沌(Chaos)状況に一筋の光を見出す責務が我々にはあるのです。シンポジウムでの基調キーワードは「過去と未来」、「失われた20年」、「技術の地域貢献」とし、多角的な議論をして頂くとともに提言を頂きました。

 我々技術者が常に自覚すべきことは、「Noblesse oblige(ノブレス・オブリージュ)」の思考概念であると思います。技術の高さの証として技術士資格を保有する会員諸氏は、技術に関しては一般人より知識や技術、これらの応用力に於いて卓越しているのです。その能力を善に使うも、悪に使うも当事者個人に委ねられるので、そこに技術者倫理が不可欠となるのです。「Noblesse oblige(ノブレス・オブリージュ)」の意味は、「能力のある人・地位や権限等のある人は一般の人よりも社会に対して大きな責任があります」と言う意味です。この言葉を下敷きにして「技術者としての倫理は如何にあるべきか?」を考えて頂ければ、混沌とした日本に飛行機雲のような「一条の光の筋」を描けると期待しています。

NPO法人 技術交流フォーラム理事長 岩尾 雄四郎