技術士制度

技術士とは

 技術コンサルタント力があると国家認定された高級技術者である。
 技術コンサルタントは、企業や公的機関の依頼に応じて、技術上の問題について、相談にのり、指導をし、あるいはプロジェクトの企画、設計、管理をし、種々の技術的な事項について調査や評価等をする職業とする技術者である。
 欧米諸国では百年以上も前から技術コンサルタントは職業として確立し、今日の産業経済の発展に大きな貢献をしている。
 わが国の技術士制度は欧米の技術コンサルタントに範をとり、技術コンサルタント育成を目的として、昭和32年に技術士法によって創設された。
 技術士法では、実務経験を重視した高度な国家試験に合格した有能の士で、禁治産者等の社会的信用にかける自由のない者にのみ技術士の名称を使用する事を許し、その上、技術士に対して業務上の秘密保持等の厳しい義務を課しているのである。こうして技術士に対しては、企業や公的機関が安心して技術上の指導、相談等を依頼できるようにして、技術コンサルタントの育成を図っている。
 技術士には技術士という名称の独占使用が認められている。医師や建築士のように業務の独占は認められていないが、国家認定された最高級の技術者として、種々の公的資格制度において有資格者とされ種々の資格試験において試験の減免措置を受けている。さらに一般の企業において、技術士の資格を企業内の技術者の研鑚の目標として、その資格の取得を奨励する傾向が見られる。

技術士の現状

 昭和33年に最初の技術士試験が実施されて以来現在までに、20の技術部門にわたり46,000名余の技術士が誕生している。
 19の技術部門は機械、船舶、航空・宇宙、電気・電子、化学、繊維、金属、資源工学、建設、水道、衛生工学、農業、林業、水産、経営工学、情報処理、応用理学、生物工学、環境および平成13年度より新設された総合技術管理部門で、このうち約49%が建設部門の技術士。次いで電気・電子、水道、機械、応用理学、農業、衛生工学、経営工学の各部門の技術士が比較的多く、業態別では、技術士の全体の11%はコンサルティング・エンジニアとして自営し、約40%はコンサルタント会社に勤務、約49%は建設会社や製造業および官公庁等に勤務している。

 技術士の具体的な業務は次の通りである。
(1)公共事業の事前調査・計画・設計監理
(2)地方公共団体の業務監査のための技術調査・評価
(3)裁判所、損保機関等の技術調査・鑑定
(4)地方自治体が推進するエキスパートバンク(中小企業向け専門家相談室)への協力
(5)中小企業を中心とする企業に対する技術指導、技術調査・研究、技術評価等
(6)大企業の先端技術に関する相談
(7)開発途上国への技術指導
(8)銀行の融資対象等の技術調査・評価
(9)APECエンジニアとして登録、APEC域内での技術活動

技術士の活用

 現在コンサルタントである技術士は1万数千人と思われるが、技術士は社会の貴重な知的財産であり、技術立国を目指すわが国にあって、その活用が強く望まれるところである。
 技術士活用の社会的効用は、大別して2つある。まず第一は、国、地方の行政機関や公的機関が行う、公共事業等の大規模プロジェクト、大規模な施設、設備の設置、海外協力、許認可に係る審査、行政鑑査、会計監査等その調査、企画、設計、プロジェクト管理、評価等の業務において事務の公正化、効率化が一段と進み、その組織の簡素、合理化も期待できること。第二は企業の技術戦力の大幅な強化に役立つことである。今日の産業技術は、急速な進展と陳腐化、総合化、複雑化、情報の氾濫といった諸相を示し、各企業が単独で技術戦略の策定、技術の改善、技術協力、技術導入等を効果的に進めることは極めて困難になっており、これらに技術士を活用することによって問題の解決は一層容易になるわけである。
 なお、近年地域の「くらし」「安全・安心」「環境」に行政・企業・大学・住民、それぞれの組織の横断的参加で取り組む「連携」「協働」の新しい意識が生まれている中で、技術士が仲介者、専門技術の情報提供者、ワークショップ手法、将来を見据えた地域活性化への提案など、個人レベル・組織レベル、専門性と応用能力を持って活動し、活用されている。

(文責:藤永正弘)