技術士だより「声の広場」 島内 明 氏

建設コンサルタントとしての業務内容変化について

佐賀地区(建設部門:土質)島内明

 私は、地盤関係の建設コンサルタントに従事している土質の技術士です。平成3年に技術士登録をして、早14年経ちました。2,3年前までは、県,国発注の公共工事絡みの調査設計業務が主体でした。私共の会社では去年から、裁判(調停)関係、個人の住宅取得に伴う問題点相談、及び特許開発の補助が新たに業務項目として加わってきました。

 裁判(調停)関係は、造成工事後に建物を建てた所有者から訴えられた施工会社からのご依頼でした。この物件は、造成後の地盤変位による擁壁クラック発生が建物の安全性を脅かしていると、建物所有者から訴えられた施工業者側に責任があるかどうかです。調停が始まり3年が経過して、専門的技術段階で行き詰まり、地盤の専門家に解釈を求められた物件でした。私は、それまでの調停経緯を聞取り、踏査による地盤状況把握をし、地盤工学的解釈を弁護士の方の質問事項に答える形で、提出しました。調停は訴えた側に対する応答を、裁判所を通して行うため、時間がかかります。辛抱強い対応が求められる業務です。また、ある程度法律を理解していなければなりません。

 個人の住宅取得に伴う問題点相談は、手付金を支払ったが、家のまわりのベランダが傾いている、どうしたら良いか、地盤状況を見てください、ということから始まりました。見に行ったら、建物自体の変位は認められませんでしたが、建物周辺の庭、玄関部等の盛土部が沈下し、建物との間に不同沈下が生じていました。造成地は、風化花崗岩の岩盤部と沼地の境目にあり、沼地を盛土した所にありました。依頼者には、造成地の地盤環境、建物と盛り土との関係、及び将来予測事項を説明しました。

 特許開発の補助は、ある電力関係の施工会社から営業競合会社に対抗できる工法開発を技術士の立場で支援してもらえないかという物件でした。設計条件、問題点、解決原理等を整理し、現在、工法アイデアを相互打合せしている段階です。

 これらの3種類の業務に共通していることは、地盤工学に関する専門的な解釈判断を、顧客から求められているということです。いづれの業務も、契約締結後、業務を責任に持って推進し、顧客との密接な打合せが必要となります。 従来業務と違うことは、顧客が明確な利益目的を持っているということです。この目的に添って、自分が持っている地盤関係の技術を提供していくことが求められています。

 なお佐賀県では、ローカル発注が進んでおり、地元業者の誠実,確実,明確な技術的対応が、県から求められています。我々県内業者は、県職員との技術的信頼関係は、昔からこつこつと築いて来ました。

 また私の会社に、関西のある大手の建設コンサルタント会社から、ある土質試験をキーワードにして検索したところ、会社のホームページに載せていた特殊土質試験が検索された、と電話がありました。まったく面識が無い会社同士でありましたが、初回の電話で技術的な信用が確立し、今回受注することが出来ました。

 以上より、これからの技術士に求められることは、
①技術者の狭い立場で対応するのではなく依頼者の立場その周辺の技術環境を考慮した対応、
②自分の専門分野にこだわるのではなく自分の出身基礎分野をベースにして周辺技術及び法律関係にも造詣を深くし柔軟な技術対応とサービスの提供、具体的には専門用語を使えば説明は簡単に行うことが出来るが相手の理解程度に合わせての説明、
③従来の営業形態にこだわらないHPを利用した営業の活用、であります。
 これから私共は、建設コンサルタントの営業基本は顧客に対する技術の信用信頼であることを意識し、従来の業務(県,国発注の公共工事絡み)ばかりではなく、自分たちの持っている技術を発展させ、社会変化に対応していく技術を開発提供し、日本国民全体の発展に貢献していく所存です。